楽園に一番近いところ
入院生活って言うのは思っていた以上に退屈だった
基本的にする事が無い
出来ればさっさとリハビリをしてさっさと自由に動ける様になりたいが、担当医はゆっくりと治していきましょうねなんて悠長な事を朗らかに言った
お陰で俺は暇を持て余している
看護師のおねーさんたちがやってくる事は多かったけれど、彼女たちも仕事が有って長居は出来ないし、俺もそう親しくも無い人達と長々話すほどの気力はまだ無い。コウが雑誌を持ってきてくれたけど、すぐに読み終わってしまった
結果、俺は寝るかぼんやりするかしか出来ずにいる
「ルカ、入るよ」
控え目なノックの後、明るい声が響く
だ
声を聞く前から、ノックの音の時点で俺は分かった。どうしてかは分からないけど、のノックだけは他と違う。ハッキリと聞き分けられる
「久し振り、」
「ふふっ、一昨日振りだね。ルカ」
笑いながら、はベッドの傍に有った椅子に腰かける。制服で来る事が多いけど、今日は私服だ。暖かそうなコート…そうか、今日は日曜か。曜日の感覚すら無くなってる
はここに来ると、いつも微笑みながらいろんな事を話してくれる
花椿さんやミヨちゃんと遊んだとか、誰かがヒムロッチにこっぴどく怒られていたとか
俺はの話を聞くのが好きだ。内容は正直なんでもいい。俺をじっと見て明るく話すが好きだ
「ルカ、やっぱり痩せたね…」
ふと会話が途切れたタイミングでは小さく呟いた
俺が病院のご飯マズイから。と軽く言っても、そう…と返すだけ。小さな手を伸ばして未だに包帯の巻かれた俺の額にそっと、本当にそっと触れる
医者の話だとこの包帯は明日か明後日辺りには外れるらしい。ラッキーな事に傷痕も残らないそうだ
の指は額から頬に移動して、やっぱりそっとそこを撫でる。なんだか不思議な感じだ。壊れものを触る様な優しさで俺に接する。普通逆じゃないのか?男と女的に
「病院食しか食べちゃ駄目なのかな…」
「問題無いでしょ。病人じゃないからね」
「そっか。そうだよね」
は少し考え込むと、けれどすぐにじっと俺の目を見て微笑む。優しげな笑顔が、やっぱり俺は好きだ
「よし、今度何か持ってきてあげる。簡単なものしか無理だけど、リクエスト受け付けるよっ」
明るく言って俺の顔を覗きこむ。何を言っても、どんな我が儘な事でも許してくれそうな気がした
ついその顔をじっと見つめてから、少しだけ悩む。甘えても、良いんだろうか。俺は強くなりたいのに。俺の弱さも何もかも、は受け入れてくれそうな気がしてしまう。どうしよう、でもなんだかとても、安心する
いつの間にか頬から離れてベッドに付いていたの小さな手を握って、言う
「じゃあ、おにぎりがいいな」
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